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「都市経営とイベントマネジメント」をテーマに事例紹介~イベント学会の活動例~

広告代理店、メディア、イベントの企画、運営に関わる企業、自治体などが会員となって構成される「イベント学会」。毎年様々な研究大会が行なわれており、9月には東京スカイツリーをテーマにした研究大会を行なうが(2011年9月7~8日)、それとは別に、テーマを設定して研究発表や意見公開を行なう活動も実施している。今回紹介するのは、そのなかのひとつ「イベントマネジメント研究会」。これは、イベントの効果に対する評価をテーマとしてきたが、3月の震災を経て、イベントに何ができるのか、経済の復興にイベントはどのように寄与できるのかという観点から、評価にこだわらず、興味深い取り組みをしている事例を紹介しながら、より幅広い視野から研究会を実施しようというねらいで開催された。

「都市経営とイベントマネジメント」をテーマに事例紹介~イベント学会の活動例~

今回のイベントマネジメント研究会は15名ほどが出席

都市経営とイベントマネジメント

今回はいわば新生「イベントマネジメント研究会」となったわけだが、その第1回目としてまずは「都市経営とイベントマネジメント」がテーマとなった。

「都市経営とイベントマネジメント。これは“都市の復興”と読み替えていただいても結構です。都市経営が経済的な活力を生み出すためにどのようなイベントが行なわれているのか。また、そこでどのようなイベントマネジメントが必要になってくるのか。その参考にしてもらおうという趣旨で開催しました」(イベント学会事務局 小林政則氏)

プログラムは大きく分けて2つ。まずは、都市の顔となったスポーツイベントの経済効果ということで、(株)電通のスポーツ局坂牧政彦氏による「東京マラソンのビジネスフィールド」。続いてネットワーク型イベントの広がりと地域活性化として(株)リバティ・ハート代表の蒲生美智代氏による「ひろがる!ママまつりムーブメント」の2つの事例が紹介された。

東京マラソンとママをターゲットにした2つのイベント事例紹介

まず1つ目の「東京マラソンのビジネスフィールド」。今や日本におけるシティマラソンの代名詞的存在である東京マラソンがどのように成長していったのか。立ち上げから関わる坂牧氏によって、具体例を示しながら紹介された。「SEE SPORTS」(観るスポーツ)であったマラソンが「DO SPORTS」(するスポーツ)となって人々に受け入れられたのはなぜか。ランニング市場に与えた東京マラソンの影響や、この東京マラソンの成功をうけて、今後行なわれる大阪、神戸、京都、名古屋といった、全国に波及するシティマラソンのそれぞれの特徴の紹介などが行なわれた。

もうひとつは「ひろがる!ママまつりムーブメント」。こちらは、若いママが自分たちで企画をし、ブースも出し、同じ子育て世代のママたちを呼び、そこに企業や行政がサポートをする「ママまつり」というイベント。これを主催するNPO法人チルドリンおよび(株)リバティ・ハート代表の蒲生氏がスピーカーとなり、イベントの取り組みや、チルドリンの活動を紹介した(イベント開催のほか、フリーマガジンの発行やママ同士のコミュニティスペースの運営なども行なっている)。

とりわけ時間を割いたのがイベント「ママまつり」の特徴について。ママたちが出展する「ママブース」がメインで、ママの「好き」「得意」「経験」を活かした発表の場として、出展者と来場者、ママ同士、ママと企業、ママと社会が笑顔でつながることのできる場として2008年にスタートし、すでに11回の開催実績がある。さほど大きな会場を借りるわけでもなく、派手な装飾をほどこすわけでもないが、毎回約3,000人を集め、手作りイベントならではの密なコミュニケーションがとれる場として企業や自治体も注目しており、販促を目的にした企業色の強い展示会とは違ったアプローチのイベントであるという点が強調されていた。

いずれも質疑応答の時間では活発に質問があり、関心の高さをうかがわせた。

「都市経営とイベントマネジメント」をテーマに事例紹介~イベント学会の活動例~

今回の研究会を主宰した岩崎博氏((有)エスシー・プランニング・オフィス代表取締役)

「都市経営とイベントマネジメント」をテーマに事例紹介~イベント学会の活動例~

「東京マラソンのビジネスフィールド」について話す坂牧政彦氏(電通スポーツ局)

「都市経営とイベントマネジメント」をテーマに事例紹介~イベント学会の活動例~

「ひろがる!ママまつりムーブメント」について話す蒲生美智代氏((株)リバティハート代表)

次回のテーマは「イベントとウェブの関係」を予定

スポーツとママ向けイベント、規模もターゲットも違っていて一見共通点はないように感じるが、参加型イベントであるという点は共通している。また、東京マラソンはスポーツマーケティングという観点でこれまでにない取り組みを行なっており、「ママまつり」も、地域密着型で、かつそれぞれのママが、来場者として参加するもよし、出展側として自分の得意技を活かすもよしという斬新さは共通している。

今回の研究会を主宰した岩崎博氏((有)エスシー・プランニング・オフィス代表取締役)は、特に2つめの「ママまつり」についてこのように指摘する。

「予算ありきでどうこうではなくて、参加者が自分で興味のあることから始めて結果を出す。そういう形が面白いのではないでしょうか」

また、研究会自体についても言及した。

「今まではイベント効果の評価についての話しが多かったのですが、それだけでは行き詰ってしまう。今まで以上にいろいろな人が議論に参加できたという点で、今回は非常によかったと思います。話を聞いて、参考にしたい、取り入れたいと思ってもらえたのではないでしょうか。次はまだはっきりとはわかりませんが、ウェブについても注目したいと思っています。イベントとウェブの関係。SNSの存在も日々大きくなっていくなかで、イベントの情報というのがどう流通すれば人々の行動を喚起することにつながるのか。そんな観点で研究会を開ければ面白いと思います」

参加者の顔ぶれも幅広く、懇親会も含めて活発な議論が行なわれた今回の研究会。おそらく2つの興味深い事例が丁寧に紹介されたからこそだろう。次回も内容の濃い研究会になることを期待したい。

(2011年6月16日(木) 鈴木隆文)

開催概要
日程 2011年6月16日(木)
会場 日本イベント産業振興協会 会議室
テーマ 都市経営とイベントマネジメント
プログラム ①都市の顔となったスポーツイベントの経済効果「東京マラソンのビジネスフィールド」 

(株)電通 スポーツ局 スポーツ1部専任部長 坂牧政彦氏

 

②ネットワーク型イベントの広がりと地域活性化「ひろがる!ママまつりムーブメント」

(株)リバティ・ハート 代表 蒲生美智代氏

 

③懇親会

 

参考サイト

東京マラソン公式サイト

NPO法人チルドリン公式サイト

イベント学会公式サイト