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コラム・特集

2020年に向けて動き出した北海道

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催がもたらすヒト・モノ・情報などの大きな動きを絶好の機会と捉えて、様々な地域活性化やビジネスチャンスの創出などの動きが出始めている。

今回は、経済産業省北海道経済産業局(以下北海道経済産業局)が展開している「ドゥーチェ・プロジェクト」について公表されている資料を元に紹介する。

1.「ドゥーチェ・プロジェクト(DO! 知恵の輪プロジェクト)」とは

「ドゥーチェ・プロジェクト(DO! 知恵の輪プロジェクト)」とは、東京オリンピック・パラリンピックを契機に、地域経済の活性化を実現するためには、これから開催までの期間に、世界に向けて北海道の魅力を発信し、北海道を売り込み、北海道に人を呼び込むための多様な挑戦が各分野で行われることが必要である、と考える北海道経済産業局が昨年11月に局内で起こしたプロジェクトである。

多様な人材・分野からアイデアを発掘し、様々な挑戦プランをとりまとめ、広く道内のプレーヤー(起業・創業あるいは地域おこし・活性化等に関心・意欲のある人たち)に提示・提案し、プランの実現・実行を支援する、というもの。

【ドゥーチエ・プロジェクトの具体的な3段階の取組】
① STEP1~アイデア発掘 (取組に繋がる視点、価値観、障害となる規制等含む)
a) 有識者(50人)からのヒアリング
  → 組織より斬新な個人の発想を重視
b) ドゥーチエ・サロン(東京五輪等を契機とした北海道経済の活性化を考える会)の開催
  → 第一線で活躍する有識者10人による知的インスパイアの場
c) イベントの開催 (アイデアソン、セミナー等。札幌、函館、帯広での開催を予定)
  → 若者、学生からのアイデア公募、機運の醸成 * 議論、発掘に当たっては制約なく行い、道産子以外の視点、若者・女性の視点を重視するとともに、若者や女性、アクティブシニア等の活躍の場づくりを重視。

② STEP2~アイデアの整理・体系化
様々なルートで発掘されたアイデアを、直接的な「オリンピック市場を目指すもの」、「インバウンド増加を目指すもの(寄与するもの)」、「オリンピックを契機にビジネス化を目指すもの」と「クロスオーバー分野」に整理・体系化し、広く道民に、今後の取組の方向性や、取組の具体的ヒントとなるアイデア、視点、価値観、発想等のプランを提示し、きっかけづくりや挑戦のための環境整備を図る。提示に当たっては、ドゥーチエ・サロンの議論を経て行う。

③ STEP3~プランの実現・実行
上記②で提示されたプランを、主力となる「経済界や道民の主体的取組を促すもの」のほか、「当局がプロジェクトメイクを行い、それを支援するもの」、「当局自らが取り組むもの」に分類し、それぞれに相応しい具体的展開方策を検討し、実施可能なものから随時、展開・支援を行う。

このプロジェクトの活動の一つとして、上記①-bの「ドゥーチエ・サロン」は、2月、4月、8月と3回開催された。
召集されたメンバーは以下の通り。(50音順、敬称略)
・伊藤 博之 クリプトン・フューチャー・メディア(株) 代表取締役
・ガットラヴ ブルース (合)10R(トアール) 代表社員
・唐神 昌子 トーホウリゾート(株) 代表取締役
・小島 紳次郎 (株)ウエス 代表取締役社長
・鈴木 宏一郎 (株)北海道宝島旅行社 代表取締役社長
・田中 章雄 (株)ブランド総合研究所 代表取締役
・張 相律   (株)北海道チャイナワーク 代表取締役社長
・長谷川 演 (株)アトリエテンマ 代表取締役
・山村 高淑 北海道大学観光学高等研究センター 教授
・吉田 聡子 (株)桐光クリエイティブ 代表取締役
 
※ドゥーチェ・プロジェクトについて詳細はこちらから

2.「ドゥーチェ・プロジェクト」の中間整理について

8月には半年を超える活動で、多くの取り組むべきアイディアが出され、そうした中から、既に実現に向かっている案件や、具体的なプロジェクト化に動きだそうとする案件等を「ドゥーチエ・プロジェクト」の中間整理としてまとめられた。

まとめられた案件は以下の通りになっている。
①今の地域が、地のままで舞台になる「サイクル・ツーリズム」
②「街カフェ」プロジェクト
③TOYAKOマンガ・アニメフェスタ
④「日本版アルベルゴ・ディフーゾ(地域全体のホテル化)」を目指した
  グリーン・ツーリズム振興等の、観光地域づくりの取組
⑤プレミアム北海道
⑥北海道ゴルフ観光
⑦北海道MANGA交流会
⑧道内でものづくりをしたい人の受皿作りと観光業に新たな形の提供を目指す「メイカーズ」
⑨憧憬(道・恵)プロジェクト
⑩全道一斉ギネス世界記録作り大会
⑪札幌(北海道)版SXSW

他にも、世界ブランドのホテル誘致やアイヌ文化の発信、北海道へのアクセス手段・機能の強化など様々な新しいアイディアが集まっている。

※中間整理について詳細はこちら

3.シンポジウムの概要

このような流れの中で北海道経済産業局は、10月5日、10年後の北海道創りに向けた新たな挑戦へのきっかけづくりを目的としたシンポジウムを開催した。
本シンポジウムでは、「ドゥーチエ・プロジェクト」活動の中で創出されたアイディアを中心に、10年後を見据えた道内発の新たな挑戦が披露された。詳細は以下の通り。

■「1人1人が10年後の北海道創りを考える」シンポジウム
  ~ドゥーチエ・プロジェクトからのメッセージ~
【日時】平成27年10月5日(月)13:30~15:30
【場所】ニューオータニイン札幌 2階「鶴の間」
【主催】経済産業省北海道経済産業局
【共催】北海道ニュービジネス協議会
【プログラム】
 ・基調講演
  「10年後の北海道のために乗り越えるべきこと」
   田中 章雄 氏 (株)ブランド総合研究所 代表取締役
 ・パネルディスカッション
   2020年のビッグチャンスを見逃すな!「1人1人が10年後の北海道創りを始めよう!」
   【コーディネータ】吉田 聡子 氏 (株)桐光クリエイティブ 代表取締役
   【パネリスト】◆ 小 島 紳次郞 氏 (株)ウエス 代表取締役社長
             →・札幌(北海道)版SXSWの開催について
           (注)SXSWとは、米国オースチンで開催される世界最大級の
            クリエイティブ・ビジネス・フェスティバル。
            ◆ 伊 藤 博 之 氏 クリプトン・フューチャー・メディア(株)代表取締役
           →・クラウドファンディングやオープンデータの活用、バーチャル道民登録制度など、
            ネットを社会貢献に活用するアイディアについて
            ◆ 鈴 木 宏一郎 氏 (株)北海道宝島旅行社 代表取締役社長
           →・日本版アルベルゴ・ディフーゾ(地域全体のホテル化)を目指したグリーン・ツー
            リズムの振興及び地域一体型観光マネジメント(DMO)の構築について
            ◆ 長谷川 演 氏 (株)アトリエテンマ 代表取締役
           →・「街カフェ」(その地域ならではの人・モノ・技術を集めた場所)プロジェクトの
            展開について
            ◆ 張 相 律 氏 (株)北海道チャイナワーク代表取締役社長
           →・外国人観光客富裕層向けに北海道ブランドを提供する
             「プレミアム北海道」の設立について

以上のように、この日のシンポジウムでは、プロジェクトの中心メンバーが参加して、すでに取り組み始めた「挑戦」などが紹介された。

※シンポジウムの概要はこちら

4.他にも様々な動きが

同様の動きとして、昨年7月経済産業省関東経済産業局では「2020年東京オリンピック・パラリンピック活用地域活性化戦略プラン」を発表して話題を呼んだ。さらに、今年の3月に新潟県三条市の國定勇人市長が中心となって「2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化首長連合」というネットワークづくりを全国の地方自治体の首長に提起し、既に348の自治体から賛同表明を得ている。(10月9日現在)

※関東経済産業局の動きはこちら
※新潟県三条市の動きはこちら

まもなく年が明けると、リオデジャネイロ五輪の本番の年となり、何かと話題になる機会が増える。また、2019年には人気が急上昇しているラグビーのワールドカップの国内初開催、さらに同じ2019年には熊本で「世界女子ハンドボール選手権」、2018年には千葉で「世界女子ソフトボール選手権」、「バレーボール女子世界選手権」等の大型スポーツイベントの開催も決定している。上述した東京オリンピック・パラリンピック開催をチャンスとして捉えようとしている様々な動きは当然これらのスポーツイベント開催にも同様に考えられることである。

これらの大型イベント開催をチャンスととらえ、各地域や地場産業の活性化に繋がるような新しい動きが続出することを期待したい。