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コラム・特集

【インタビュー】特殊メイクアーチストJIRO氏に聞く ―人とのつながりが創作を生む。イベントは、それを演出する交流の場―

特殊メイクの第一人者として、映画はもとより、TVやCM、数々のPVやイベントなど新たな境地を開拓して優れた才能を発揮するJIRO氏。今回、特殊メイクに対する仕事のこだわりや、イベントに対する思いなどをたっぷりと語ってもらった。

 

特殊メイクの新たな表現の場を広げることに面白さを感じます

【インタビュー】特殊メイクアーチストJIRO氏に聞く ―人とのつながりが創作を生む。イベントは、それを演出する交流の場―

「人とのつながりが新たな創作を生む。イベントが、それを演出する交流の場であってほしいですね(JIRO)」

―― 特殊メイクにはもともと興味がおありになったのですか?

JIRO 芸大(東京芸術大)では実は彫金を勉強していたんです。卒業後も最初はその関連の仕事をしていたのですが、ある日テレビの特殊メイクを紹介している番組を見たんですね。自分の知らなかった素材がいろんな形に変容するのを見て、それまでの彫金にない面白さを感じたんです。リアルなものを、そのままリアルに創る面白さですね。そして特殊メイクは、映画の中で使われたり、より多くの人の目に触れる機会があるということにも魅力を感じましたね。

―― 実際に携わってみて、特殊メイクの面白さはどのように深まりましたか?

JIRO 創作自体の魅力ももちろんなのですが、いま僕の中で面白いと感じているのは、特殊メイクがカテゴリーをどんどん広げていることなんです。技術の進化によって、表現できる幅が広がってきたというか、特殊メイクでリアルなキャラクターを創ることを飛び越えて、新しいアレンジを加えたいという方向性に移行してきました。新たな創作の形を、どんな場所で見てもらうことで人に感動を与えられるか。創ることの先の部分に、興味が出てきたんですよね。

 

―― 創作の延長線にあるプロデュースの部分?

JIRO そうですね。映画の中で使われる特殊メイクは、あくまでも映像というフィルターを通して見られるものですね。それもすごく素敵なことではあるんですが、それだけではもったいないと思うようになったんです。例えば屋外広告やファッションショー、またあらゆるイベント。そうしたリアルな場に対応できるだけの技術が、特殊メイクでも進化してきたということなんです。

―― JIROさんのアーチスト観がうかがえるような気がしますね。

JIRO 僕は肩書きをつけるとすれば、「特殊メイクアーチスト」というものになるんですけど、僕自身はそこまで芸術家志向という思いはないんです。普通、芸術家というのは、自分の内面から生み出したものを、興味ある人が観て理解してくれればいいという感覚だと思うのですが、僕の場合は、求められているものに対して常に120%で応えたい、という考えが念頭にあるんです。求められたことに対して、それ以上のものを提供できる部分に価値を見出したい。だからアーチストというよりは、サービス業に近い存在だと思っています。自分が創りたいから、という感覚ではなく、望まれているものを表現する、という考え方。逆にアーチストとして見てくれる人には、「もっとわがままになればいいのに」とよく言われますが(笑)。

―― これまでの特殊メイクの作品で、創作が大変だったのはどんなものでしょうか?

JIRO 先日、あるバルーン会社さんから、某テレビ局の依頼ということで、マツコ・デラックスさんの等身大の風船を創りたいとの話があったんです。エアを入れてふくらませるゴム風船で、それだけ大きなものを創るのは初めての経験でしたから大変でした。新たな挑戦でしたが、完成することができたのはうれしかったですね。

―― 作品について、できなかったらどうしよう、というプレッシャーはあるものですか?

JIRO それはいつもです(笑)。多くの場合は納期が短くて、締切りまでの時間がない。予算もなかなか見込みが難しくて、見積り通りにいかずに結局赤字になっちゃうこともよくあります。だけど、そうした難しい仕事に巡り合うチャンスは貴重ですし、それに他ではやれそうにないからと僕のところにもってきてくれるというのは嬉しいことですしね。たとえ赤字になっても、その機会を生かせばまた次につながると思っているので、全然苦ではないんですね。

―― 性格的には楽天家?

JIRO …でなければなかなか続いてないでしょうね。愚痴はしょっちゅうスタッフに言ってますけど、たぶん誰も聞いてない(笑)。どうせそこまで思ってないだろう、くらいにしか思われてないんじゃいかな。でも徹夜作業とか、皆が帰ったあとに自分だけアトリエに残ってる状態とか好きなんです。そんなときに、オレは誰よりも頑張ってる、と思うとまたアガれるというか(笑)。ポジティブというのか、楽天的なのか、自分ではよく分かりませんけどね。

 

イベントでの人と人との融合が特殊メイクの新たな創作を生む

【インタビュー】特殊メイクアーチストJIRO氏に聞く ―人とのつながりが創作を生む。イベントは、それを演出する交流の場―

―― JIROさんは、スクールを主宰して特殊メイクの技術を若い人に教えておられますが、この目的について聞かせてください。

JIRO 特殊メイクの仕事に夢を抱いて、うちのアトリエを訪ねてくれる若い子がいるわけですが、彼らの作品を見た時に感じるのが、学校で教わったカリキュラム通りのもので、あまり変化がないな…ということなんです。それを何とかしてあげたいと思ったのと、彼らの意識の中にある、特殊メイク、イコール映像の世界というものを変えてあげたいと思ったのがスクールを始めた要因です。

特殊メイクの世界に夢をもって入ってきた若い子が、その先、活躍する場が限られることで行き詰まってしまうのは避けてあげたい。だから少し見方を変えて、特殊メイクの技術はただ映像に使うのではなくて、もっといろんな表現として使える手段があることを教えてあげたいとの思いがあります。

特殊メイクという技術を教わることで、彼らはいわば「武器」を手にするわけです。けれど肝心なのは、その武器をふるう場所を、自分たちでいかに広げられるかどうか。それは自分次第で十分に広げられるものだし、ぜひ広げてもらいたい。そのために僕としては、まずは彼らに、できるだけよく切れる武器を与えてあげなくてはいけないと思うのです。

―― なるほど。さて、JIROさんは多くのイベントへの出演・出展を重ねておられますが、JIROさんにとって、イベントとはどのような場所でしょうか。

JIRO 僕自身、これからさらにいろいろな分野の方と新しいコラボレーションができる気がしています。イベントは、そうした新しい出会いを与えていただける場だと思っています。僕らが創ったものをたくさんの方に見てもらって、新たなコラボについてのイメージを、さらに広げてもらえる可能性がその場にはあります。自分たちのもつ技術に、実際に興味をもってくれる人が少なくないことを、いろんなイベントで実感することも多いですね。これからも、必要とされる限りはどんどん参加していきたいと思っています。

―― そうした場を通じて、さらなる創作を今後も生み出されていくことを期待しています。

JIRO 最近は、特殊メイクにこだわらないで何でもやっています。「何でもできるの?」と聞かれて「はい、何でもできます」と答えちゃってます(笑)。そして、僕だけの力でできなければ、仲間の力を借りたいんですね。

例えば、美味しい饅頭を作ってくれ、と言われても僕だけでは作れませんが、でも饅頭の原型をうちが創って、饅頭屋さんとコラボすることで新たな創作が生まれる。つまり他の方たちが、僕らと関わったことで新しいものを生み出して、それを僕も紹介することで、新たな作品につながっていく。そうした循環がどんどん実現していけば、すごく面白いコミュニティになっていくと思うんですね。それが夢です。ただ、今はそれをつなげる場所が意外と少ない。だからこそ、イベントという場がぜひそうした交流の場であってほしいと思います。

この、モノがあふれた時代に、ゼロから新しいものが生まれるということはもはや難しい。そう考えるのではなく、自分がいて、他の人がいて、自分の中にあるものと他の人がもっているものを合わせればいい。それが、新しいものを生むことにつながるんです。イベントが、ぜひそうした融合の場になってほしいと願っています。

 

プロフィール

【インタビュー】特殊メイクアーチストJIRO氏に聞く ―人とのつながりが創作を生む。イベントは、それを演出する交流の場―

JIRO

映画、TV(CM・ドラマ・バラエティ)における特殊メイク、造詣制作の第一人者として活躍中。またPVやショー、各種イベント、舞台や屋外広告など、特殊メイクを用いた新たな創作を展開、同分野の新境地を開拓する注目の存在である。特殊メイク養成スクール Amazing School JURを主宰。

 

 

■office 東京都港区北青山3-9-12 SAYJUNEビル1F
■自由廊アトリエ 東京都江戸川区松江7-25-16  TEL 03-5879-3166
http://www.jiyuro.net/

 

最近の主な活動の実績

■TV番組
「TVチャンピオン 特殊メイク王選手権5」「同6」優勝
「シルシルミシルさんデー」(出演)
「魔女たちの22時」「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで」
「となりのマエストロ」「クメピポ」(出演)
「スーパーニュース」(出演)「奇跡体験 アンビリーバボー」
「マジック革命セロ」「TVタックル」「ゴッドタン」 ほか多数

■映画
「ヒーローショー」「デトロイトメタルシティ」「東京残酷警察」「キサラギ」 ほか多数

■作品

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