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コラム・特集

イベントと食品ロス削減(190624)

<<我が国の食品ロスは年間643万トン>>
環境省の発表(平成31年4月)によれば、我が国では1年間に643万トンのいわゆる食品ロスが発生しているという。内訳としては事業系(食品の製造・卸・小売り、外食)で可食部分として考えられる規格外品、返品・売れ残り、食残し等が352万トン、一般家庭での食べ残し、過剰除去、直接廃棄等が291万トンと推定されている。これらは食品リサイクル法における再生利用や廃棄物処理法における食品廃棄物等を除いた、純粋に食べられるもの、である。今、この食品ロスが社会的な大きな課題となっている。

環境省のリリースについてはこちら
食品廃棄物等の利用状況等の概念図についてはこちら

 

<<東京2020大会の取り組み>>
いよいよ来年に迫った東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会においても、食品廃棄の抑制について「東京2020大会における飲食提供に係る基本戦略」が策定されており、この中で「持続可能性への配慮」として、次のような「運営上の取り組み」につての記載がある。

○持続可能性に配慮した運営上の取組
• 「持続可能性に配慮した調達コード」に合致した食材の調達
• 食品廃棄物抑制の重要性についての意識啓発
• 料理の給仕量を調節するポーションコントロール等の食品廃棄物の発生抑制
• 飲食提供の形態(運営特性)や実行可能性も十分に考慮したうえで、可能な限りリユース食器を利用
• リユース食器が利用できない場合、資源化が可能な素材の使用等、リユースに相当するような持続可能性への取組の追求
以上東京2020大会公式ホームページより。詳細はこちら
 

<<スポーツイベントにおける食品ロス削減手法の調査について>>
この調査は冒頭に記したような莫大な量の食品ロスが発生している現状に鑑み、農林水産省では、国際的なスポーツイベントの現場についてどのくらいの食品ロスが発生し、これに対してどのような方法で抑止するかの検証を行っており、その報告書が公開されているので紹介したい。(平成31年3月)
農林水産省としては、今後、本結果を事前キャンプ地やホストタウンでも活用できるよう、地方自治体や飲食事業者に働きかける予定だとしている。

●調査概要
2018年9月から10月に行われた「2018女子世界バレー選手権大会」の第1次ラウンドにおいて、参加チームが宿泊するホテルの協力のもとに、食事(ビュッフェ)をする外国人選手等を対象に、通常の手法で提供した場合と、食品ロス削減に効果的な多言語での啓発資材の活用や、提供手法の工夫を行った上で提供した場合の食品廃棄物量を計測し比較する等で、効果的な手法の検証を行った。この調査の実施にあたっては関係団体の協力の下で行われた。
提供手法の工夫・・・スモールポーションでの提供
多言語での啓発資材・・・ビュッフェカウンターに多言語表記の啓発ポスター、各テーブルに啓発三角柱ポップ

●結果
(ア)ポスターや三角柱ポップによる啓発を実施した日以降、一人当たりの食べ残しの量は減少。(食べた量、食品の総量と比較して共に一人当たりの食べ残し量が減少)
(イ)一部の選手等が回答したアンケートでは東京2020大会でもポスター、三角柱による食品ロス対策は有効であるとの支持を得られた。他方、日々の食事の需要量を適切に見極めることが食品ロス対策には重要であり、東京2020大会では競技スケジュールや参加国等の情報に留意しながら、提供した量や食品ロスの量を計測して見える化することが予測精度の向上に資すると考えられる。報告書は以下を参照願います。
スポーツイベントにおける食品ロス削減手法の調査(報告書)
スポーツイベントにおける食品ロス削減手法の調査(概要版)

実際の啓発の様子 ポスター、三角柱(写真は農林水産省ホームページより)
イベントと食品ロス削減(190624)
イベントと食品ロス削減(190624)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 

我が国においては今後大型の国際イベントが続々と開催される。様々な有意義な交流とともにどうしても食品ロスの発生は妨げられないが、工夫と努力により抑制はできるはずである。本稿校で紹介した農林水産省の検証事業における行為はイベント総体からみればささやかなものではあるが、その有効性が実証されている。今後、様々なイベントに係る関係者がこのようなささやかな行為を積み重ねていくことが望まれている。