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JEPCイベントカレッジ2011で“イベントに関わるリスクと保険”を学ぶ!

JEPCイベントカレッジ2011で“イベントに関わるリスクと保険”を学ぶ!

イベントカレッジ2011[イベント基本シリーズ]、今回はイベントのリスクと保険がテーマ

イベントを考える上で無視することのできない様々な「リスク」。主催者にとって注目度の高い問題といえる。2008年から12回続いているJEPCイベントカレッジはこれまでも「食の安全」「助成金の活用法」「上海万博」など、イベント関係者にとって興味深い話題を取り上げてきたが、2011年の最終回となる今回は、イベントとリスク、イベントと保険についてのイロハを、保険のプロである南健二氏(あいおいニッセイ同和損保(株))がくわしく解説してくれる内容となった。司会はJEPC関東本部参事の岡星竜美氏がつとめ、会場には、イベントの施工や運営など、現場での業務に関わる企業やマスコミ関連の企業などから、様々な参加者が集まった。

イベントのリスクというとつい目がいってしまうのは来場者や施工者の熱中症・ケガなどだが、今回重点的に解説があったのは「中止になってしまうリスク」について。台風1つで準備に費やした資金や労力が泡となってしまったり、見込んでいた来場者、来場収入がなくなったりといった例は多く存在する。保険適用の問題を抜きにして、最近の「中止」の例でいえば、マイケル・ジャクソンの急逝によって幻となってしまったワールドツアーや、3.11の地震により、理由は様々だが中止となってしまった数々のイベントなども挙げられる。では、中止というリスクに対応する保険の実情は、どうなっているのだろうか…?

当日のプログラムは4段階で進行した。まずステップ1としてイベントを取り巻く様々なリスク例を紹介。続くステップ2では数あるリスクをどう洗い出すか、どこを優先して対策をとるのかというリスクマネジメントの話を、3.11以降でよく話題に登っている「BCP(事業継続計画)」の考え方を紹介しながら解説。ステップ3では「イベント中止保険」を特に取り上げて、その特徴や契約までの流れなどをレクチャー、最後のステップ4では関連する生命保険の説明があったあと、質疑応答へと進んだ。

JEPCイベントカレッジ2011で“イベントに関わるリスクと保険”を学ぶ!

講師はあいおいニッセイ同和損害保険(株)の南健二氏

1つのポイントとなるのは問題となるイベント中止保険の位置づけだ。配布資料によると、自賠責保険、火災保険、賠償責任保険、建設工事保険、労災保険などさまざまな企業分野の損害保険があるなかで、イベント中止保険は「費用・利益の保険」というジャンルに属する。このジャンルには他にどんなものがあるかというと、「例えば自動車販売において、自動車の本体不良で、販売後に購入者から回収する費用もこれにあたります」(南氏)ということだった。ざっくり「イベント保険」といわれることもある賠償責任保険や傷害保険とは根本的に異なり、予想されるリスクが多く、それに応じて保険料も高いのが特徴になる。

 

ステップ3では、あいおいニッセイ同和損保の「イベント中止保険」に照らして、「どんな理由の中止だと保険金が支払われるか」「どんなイベントが対象の保険か」「契約日のリミット」「保険金が支払えないケース」「保険金でカバーできる費用、できない費用」「申し込みに必要な書類や資料は何か」…といった具体的な問題について解説があった。このあたりの情報は保険会社のサイトを見てもまず載っていないということで、参加者にとっても非常に興味深い内容。ただし、全般的な注意点として、そもそもの「中止」の定義づけや、どこまでの費用を補償するのかについては、契約前に細かく申請した上で取り決めることになっており、それによって保険料も大きく変わってくるということがある。

話の中で講師の南氏が何度も語っていたのは、保険会社にとって「イベントのリスクは未知数である」ということ。リスクが高い分、引き受けができない事例も多く、できても保険料が多額になってしまう例が多い。結果的にイベント中止保険は積極的に売る商品にはあたらないのが現状だという。

JEPCイベントカレッジ2011で“イベントに関わるリスクと保険”を学ぶ!

質疑応答の時間にはイベント開催者側からの質問や意見が多くあがった

一方のイベント主催者側に問題となるのは保険料の高さ。セミナー参加者からは、現在の保険料の状況では加入は現実的ではないとして、「もっと加入者側にたった保険を」と求める声や、保険料を設定する元となるデータの開示を求める声もあった。

これらの話からも推測できるとおり、実際に南氏の所属する支社では「イベント中止保険」が全売上に占める割合は非常に少なく、1%に満たないとのこと。セミナー後半、来場者を交えて自由に発言できる時間があったが、そこではイベント全般で「イベント中止保険」に入る例はとても少なく、入れるのは予算の潤沢なイベント、官公庁系のイベントに限られているのでは、という仮説も話題にのぼっていた。

全体的に、イベントのリスクや保険と一口に言っても様々な種類があること、そして、外側から全体像がみえにくい「イベント中止保険」について、その基本的な考え方が掴みやすい内容になっていた本セミナー。一方で保険会社側としてもイベント主催者側としても、「イベント中止保険」は決して身近なものではないということが明らかになった。それでも主催者側にとって「中止のリスクを減らしたい」という要望は確実にある。イベントの中止に対していかにリスクを減らすか、イベント業界・保険業界双方にとってメリットがある現実的な解決策はあるのか等々、まだまだ議論の余地がある問題といえそうだ。

(2011年12月8日(木)大塚泰子)

 

JEPCイベントカレッジ2011[イベント基本シリーズ]
「イベントに関わるリスクと保険 基礎講座」概要

【講師】あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 東京南支店 大田支社 主任 南健二氏
【協力】株式会社インターリスク総研
【主催】一般社団法人日本イベントプロデュース協会関東本部「セミナー分科会」
【日時】2011年12月8日(木) 18:30~20:30
【会場】JEPC会議室(千代田区内神田2-3-14 平沢ビル4階)
JEPC:http://www.jepc.com